面倒くさがりの自分がおもしろいほどやる気になる本という本を読んでいて、
ストレスが溜まったときに吐き出して発散することが逆効果という話を聞いて、
な、なんだってーーーってなってしまったので、調べてみた備忘録です。
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カタルシス効果とは、心の中に溜め込まれたネガティブな感情やストレスを、泣いたり叫んだり、誰かに話したりすることで外に解放し、心理的な安定や浄化を図るとされる心理的な現象です。
この考え方は、古代ギリシャの哲学者アリストテレスが『詩学』の中で、悲劇が「恐れ」や「憐れみ」を呼び起こし、それによって心が浄化(カタルシス)されると述べたことに由来しているらしいです。
カタルシス効果は一般的にストレス解消に有効だと考えられてきましたが、研究によると、特に怒りの感情に関しては、感情をそのままぶつけたり、攻撃的な方法で発散したりすることが、かえって怒りを増幅させ逆効果になる場合があることが示唆されています。
https://faculty.washington.edu/jdb/345/345%20Articles/bushman(2002).pdf の論文「Does Venting Anger Feed or Extinguish the Flame? Catharsis, Rumination, Distraction, Anger, and Aggressive Responding」では、怒りを表明することが攻撃的な行動を減らすのではなく、むしろ増加させる可能性が論じられています。この研究では、怒りを反芻したり、怒りに関連する活動を行ったりすることが、怒りの感情を維持または強化する可能性があると結論づけています。
実際に論文では次のように述べられています:
“Venting while ruminating about the source of provocation kept aggressive thoughts and angry feelings active in memory and only made people more angry and more aggressive. These results provide one more nail in the coffin containing catharsis theory.”
— Bushman, B. J. (2002). Does Venting Anger Feed or Extinguish the Flame?, p. 730
また、別の実験結果としても以下のように記載されています:
“People in the rumination group felt angrier than did people in the distraction or control groups. People in the rumination group were also most aggressive, followed respectively by people in the distraction and control groups. Rumination increased rather than decreased anger and aggression. Doing nothing at all was more effective than venting anger. These results directly contradict catharsis theory.”
— Bushman, B. J. (2002). p. 728
個人の感覚と感想
個人的には効果を感じることもある
カタルシス効果が逆効果になるという研究がある一方で、個人的にはネガティブな感情を誰かに話すことで気持ちが落ち着く経験があります。
例えば、友人と飲んでいる時に嫌な出来事について話すと、「まあでもこういうことってあるよね」と客観的に考えられるようになり、怒りや不満が和らぐように感じます。
ただし、このとき自分がやっていたのは単なる「怒りの発散」ではなく、話す過程で状況を整理したり、相手の視点や気持ちを理解しようとすること(これは心理学で視点取得(Perspective-taking)、そして認知的再評価と呼ばれるものに近いかもしれません)だったと今になって感じています。自分の気持ちを整理し、感情を言語化するアフェクトラベリングの要素も含まれていたからこそ、感情が落ち着いたのではないかと思います。
関連する心理学用語
ここでは、感情のコントロールに関係しそうな心理学用語をいくつかメモしておきます。
- 視点取得(Perspective-taking): 他者の視点や立場から状況を理解しようとする認知的プロセスです。これにより、自分とは異なる考え方や感情があることを認識し、より広い視野で物事を捉えることができます。
- 認知的再評価(Cognitive Reappraisal): 感情を引き起こす状況や出来事に対する考え方や評価を変えることで、感情的な反応を調整する感情制御戦略の一つです。ネガティブな状況を異なる角度から捉え直すことで、感情的な影響を軽減することができます。
- アフェクトラベリング(Affect Labeling): 自分の感じている感情に言葉で名前をつけることです。これにより、感情を客観視し、その感情の強度を和らげる効果があるとされています。脳の扁桃体の活動を鎮めることが研究で示されています。
イライラした時どうすると良いのか
いろいろ調べたり、自分の経験を思い返したりしてみると、イライラした時には感情を衝動的に発散するよりも、うまく調整する方法のほうが良いらしいです。以下はその中でもよく見かけた方法のメモです。
- アフェクトラベリング: 自分の怒りや不満を言葉にして表現することで、感情を客観的に捉え、冷静になれることがあるそうです。「自分は今、〇〇について怒りを感じているんだな」みたいに、感情に名前をつけるのがポイントとのこと。
- 状況や他者の理解: イライラの原因になった出来事や、相手の立場・背景を想像してみると、少し気持ちが落ち着くこともあるらしいです。
まとめ
- カタルシス効果は、特に怒りの感情においては逆効果になる場合があるという研究結果がある
- 感情をただぶつけるのではなく、言葉にして整理したり(アフェクトラベリング)、相手の立場を考えてみたりすることで、気持ちが落ち着くこともあるみたいです
- イライラした時は、アフェクトラベリングや他者理解を取り入れると落ち着くことがあるかもしれません
- 心理学は奥深く、自分の経験と重ねながら調べるとすごく面白いと感じました
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